投擲(とうてき)競技の共通ルール

このページでは投擲競技の基本的なルールについて説明する。重要なポイントを押さえておけば観戦や競技の際に支障がでることはまずないだろう。

競技を行う上で頻出の用語は太字で表記している。

 

試技回数(Round)

投擲競技は記録を狙うための記録会と、勝敗を争う競技会とでは投げる回数が異なる。

記録会では三回の試技を行う。三回投げたうちの最高記録が自分の記録となり最終成績に掲示される。平均の記録やファウルの回数は競技成績に影響しない。

競技会ではまず三回の試技を行い、記録上位8人を選ぶ。この上位8人をトップエイトもしくはベストエイト(以下ベスト8)と呼ぶ。また、競技者の間では単にエイトと呼ばれることがある。

ベストエイトに選ばれた8人はさらに三投、計六回の試技を行うことができる。前半3投で9位以下に終わった選手たちはその時点で投擲場を去ることになる。

ベスト8進出者は前半三投を含む計六投のうちの最高記録が最終成績として公認される。

陸上競技では8位までが入賞と決められているため、ベスト8にさえ残れば入賞が即決定する。100m~800m,リレー種目の場合は予選や準決勝を経て上位8選手(またはチーム)を選出して決勝を行うため、決勝進出と入賞はほぼ同義である1ただし失格にならず完走する必要がある

投擲種目の場合はベスト8が“事実上の決勝”となる。

6回の試技は上位8人の入賞者のみに与えられる特権

 

ちなみに、前半3投が全て無効試技(ファウル)になると、当然ベスト8に残ることはできず、また順位もつかない記録なし(NM,ノーマーク)が最終成績となる。

なお、参加者が8人以下の競技会の場合は前半3投がファウルでも全員が4投目以降に進むことができる。

 

試技(Attempt)

記録会や規模の小さい競技会を除き、選手たちには一投につき60秒の制限時間が与えられる。競技者はこの制限時間内に投擲動作を行わなければファウルと判定される。

投擲の順番が回ってくると選手のゼッケン番号がコールされるが、この時制限時間の計測も始まる。制限時間内であれば、サークル(砲丸投げ,円盤投げ,ハンマー投げ)の中に入った後でも出入りすることが可能。

制限時間内に投擲動作を始めさえすればファウルになることはなく、必ずしも動作を完了させる必要はない。また、動作を初めても投擲さえ行わなければ時間の許す限り試技をやり直すことができる。

 

試技順

大会運営側で特に取り決めのない場合、コンピュータでランダムに決定された試技順に基づき競技運営が行われる。四投目以降(=ベスト8)に入ると順位の低い選手から投擲を行う。

つまり、最後の投擲者は三投目までに一番良い記録を出した選手ということになる。

 

世界陸上と五輪の場合
大会ごとに異なるが、世界陸上や五輪などの世界大会では5投目までの順位を基に6投目の試技順を再び入れ替えるルールが採用されることがある。つまり、5投目終了時点でそれまで一位だった選手が2位以下の選手に逆転されているならば6投目の最終投擲者は別の選手ということになる。日本の大会ではベスト8の試技順が変わらないルールが主に採用されている。

 

ファウル

無効試技、すなわちファウルには大きく分けて3種類ある。ファウルの場合審判が赤旗を上げ、有効試技の場合は白旗を上げる。審判は基本的に3~4人おり、そのうち旗を持ってファウル判定をするのは競技者側にいる審判と落下地点を判断する審判の二人である。

 

・制限時間内に動作を開始しなかった時
・サークル外、もしくはライン外(やり投げの場合)に体の一部が接触した時
・投擲物がエリア外に落下、もしくは防護ネットにかかった時

制限時間外のファウルについては前述のとおり。

 

サークルもしくはライン外(やり投げの場合)に体の一部が接触した時

誰でも体育の体力テストでハンドボール投げをしたことが一度はあるだろうが、投擲競技では決められた範囲内でのみ試技を許されている。ハンドボール投げの場合、おおよそ2m間隔の平行線を引き線を踏まないように投げるが、陸上の投擲競技においてはサークルまたはピットと呼ばれる場所から投げる。

 

投擲動作を行う際、ファウルとなる要素は以下の通り。

・サークルの外に体の一部が触れた場合(やり投げの場合はラインに触れる)
・投擲物が落下する(地面に触れる)前にサークルを出た場合

 

サークルの左右には白い線が一本ずつ引かれており、競技者はその線より後ろ(投擲方向とは真逆)より退出しなければならず、これを破った場合もファウルになる。

 

失敗投擲だと悟るや否や、自らサークルの前方へ出てファウルにし、記録を消すことがある。トップレベルの競技者によくみられる。

 

投擲物がエリア外に落下、もしくは防護ネットにかかった時

投擲物は34.92度(やり投げは29度)のライン内に落下させなければならず、それより外に落ちた場合ファウルとなる(はみ出さなければラインに触れても良い)。

また、やり投げを除く種目では安全上サークルの前方以外をぐるっと覆う防護ネット(ケージ2単にネットという場合も多いという)が存在するが、これに投擲物を引っかけてしまうとファウルになる。

ただし、ネットに触れても投擲物がエリア内に落下すれば有効試技になる。

 

ハンマー投げの場合はさらに前方に大きなネットが立っており、砲丸投げ,円盤投げに比べ実質的な有効角度はかなり狭くなっている。

 

投擲用具(Implement)

国内ではNISHI,海外ではDENFI,Nelco,Polanikなど様々なメーカーの投擲用具が存在する
3その他にもGill AthleticsやATE、やり投ではNordic(ノルディック)が人気メーカーとして挙げられる

 

砲丸、円盤、ハンマー、やりなどの投擲用具は基本的に主催者が用意したものを使用する。一部大会によっては競技者の持ち込みが認められている場合もあり、放映のある大会では競技者の名前や目印が書かれた用具が映ることがある。

また、やりに関しては日本の競技会では持ち込みが認められているケースが多いが、これはおそらく費用の問題である。試合前に用具が検定基準を満たしているかを検査する時間があるが、やり投げの場合特にこれを「やり検」と呼ぶ。

 

 【安心の日本製】
中高生の大会で用意されているのはNISHI製がほとんど

 

計測(Measurement)

記録の主な計測方法はペグ・光波測定の2種類。大会の規模によって使い分けられる。

 

小規模の大会

NISHI ONLINE STOREで販売されている投擲競技用ペグ

 

砲丸投を除く投擲種目では試技ごとの計測は行わず、ペグと呼ばれる試技番号が記された目印を各選手の最高記録地点に突き刺すことがある。記録が伸びれば新たに刺し直し4記録が伸びると「ロング」、伸びなければ「ショート」と審判からコールされる、全試技が終了したのち金属製のメジャーで計測する。

記録が伸びたかどうか目視で判断しづらい場合は審判の裁量で別のペグを刺すことがある。その場合、競技後の計測でペグを計測・比較し記録の良いのものが公式結果として採用される。

 

主要大会

【引用】光波距離計DM-400 製品ページ

 

日本選手権などの大きな大会では正確性を期すため機械計測が行われる。投擲物の落下痕に審判が棒を突き刺し、機械で投擲地点からの距離を測定する方式を用いる(光波測定)。

計測された記録はフィールド上の芝生内にある電工掲示板に表示される。

万一機械の故障・不備が発生した場合には金属製メジャーによる計測に切り替えることも稀にある。

世界陸上オレゴンでは計測員が二人いた

 

ショート

地方競技会では時短のため計測のための最低記録を設けていることがある。これらの距離に達しない試技は計測されず「ショート」と言われ切り捨てられる。当然、記録は残らない。

例えば砲丸投げの場合、8mもしくは10mがショートの条件になっていることが多い。そのため選手の間で「初心者のライン」「一定の実力者が超えるライン」というように認識をされていることがある。実際、このライン(特に10m)を越えられる選手は上位を狙える選手である。