東京五輪の延期が決定し、アスリートやそれを取り巻く環境は日々厳しいものになってきている。競技力の維持はもちろん、コロナウイルスによる収入低下や失職問題も深刻さを増している。
- 1 How Olympic Athletes Make a Living:https://www.sportsmanagementdegreehub.com/olympic-athletes-salaries/#:~:text=Income%20depends%20on%20event%3B%20sprints,prize%20money%2C%20etc.).
- 2 A Longitudinal Examination of the Throwing Career Of Reese Hoffa: https://trackandfieldnews.com/track-coach/a-longitudinal-examination-of-the-throwing-career-of-reese-hoffa/
スポンサー契約の先行き不安
リオ五輪砲丸投げ金メダリスト、ライアン・クルーザーもコロナウイルスの流行による収入減を危惧する一人だ。
結局のところスポンサー契約が僕の給料だから、ちょっと困っているんだ。収入の大半を占めているからね。(クルーザー)
クルーザーはナイキとスポンサー契約を結んでいるが、それはあくまで2020年までのこと。2021年以降どうなるかは選手とスポンサー次第なのである。アトランタに拠点を置くエージェントのポール・ドイル氏によると、陸上選手は特に厳しい状況下に置かれているという。ダイアモンドリーグの初戦試合が延期になり、スポンサーからのパフォーマンス給が絶たれてしまったからだ。
ただし、2020年は多くのスポーツで中止・延期が決まりファンの欲求・関心が来年以降高まっていくのは必至。そういった背景を踏まえて、数少ないチャンスでいかにスポンサーにアピールできるかがアスリートにとって大事になってくる。
陸上は投擲に限らず、決して“儲かる”スポーツではない。それは世界一の陸上大国アメリカにも当てはまる。そして当然種目間格差も存在する1短距離やマラソンが最も高収入であるようだ。
SPORTS management degree hubによると、トップ10選手のうち5万ドルを稼げるのは約20%。スポンサー収入、大会での賞金など諸々併せても全米ランク10位以内の選手の半数が年収1万5000ドル未満だという。ランキング10未満の選手に至ってはスポーツ活動で得られる収入はほとんどゼロに近く、アルバイトなどの副業や定職に就いている選手が多数である。
Athlete earnings studyによると、アメリカにおける跳躍・投擲・七種競技の選手は世界ランクによって以下のような収入を得る。
地位 | 世界1位・スター選手 | 世界ランクトップ10常連選手 |
収入 | 10万ドル~ | 2万~7万5000ドル |
収入例 |
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地位 | 世界ランク10~25位 | 世界ランク25位未満 |
収入 | 1万~3万5000ドル | 0~1万ドル |
収入例 |
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アメリカの選手だけではない。円盤投げのダニエル・スタール(スウェーデン)も「収入が7,8割減った」という。
先人が通った道
ここで具体的な苦労エピソードを紹介しよう。2005年ヘルシンキ世界陸上金メダリスト、クルーザーの大先輩にあたるアダム・ネルソン(当時25歳)。彼は2005年、世界陸上の後に行われた「ワールド・アスレティックス・ファイナル」に出場した際、“SPACE FOR RENT(貸出スペースの意)”と書かれたシャツを着て出場した。スポンサー契約に事欠いていたのである。