円盤投げ年代別カテゴリーから見る日本と海外の記録差

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当サイトを閲覧するような投擲フリークならば、シニア・U20・18などの年代カテゴリーに関わらず日本勢と海外勢の体格差・記録差は常日頃から痛感しているはずだ。しかし、具体的にどれほどの隔たりがあり、どの年代から記録差が拡大していくかという点まで把握している人はあまりいないだろう。

U18(中学規格1.5㎏)

世界陸連公式サイトで参照できるのはU18カテゴリーからなので、当記事ではその年代からシニアまでを比較・考察していくこととする。今回は円盤投げに焦点を当てる。

昨年(2023年)のU18世界リスト(1.5㎏)を見ると、リストトップはZak Naude(南アフリカ,17歳)の64m99で、10位がZehao Jiang(中国,17歳)の60m33。これら記録上位は皆2007年以前生まれの16歳~17歳の選手であり、日本の学年で言うところの高校一年生~二年生に相当する年代である。

年代別の規格は国際的に定められているものの、例えばアメリカの高校では1.6㎏の円盤が使用されているといった具合に、中学・高校で用いる規格は各国における陸連の任意に委ねられている。

日本の場合、2007年までは高校規格でも1.5㎏(当時はユース規格と呼称されていた)が使用されていたが、翌2008年からジュニア規格(現在のU20)である1.75㎏が採用された。そのため、1.5㎏を投げる機会が少ない日本勢が記録上不利なのは強ち間違いではない。

2023年のU18日本トップは砲丸投げで全中Vを果たした大垣尊良(厚真スロー・北海道/中3)の49m63で、世界リストでは147位。続く日本勢2位は、大垣に次いで全中2位の星川俊輔(新庄中3・山形)の47m01で242位。17歳まで含めたリストのため、やはり世界各国のエリートとは開きがあるのは仕方がないところもある。

では彼らと同じ2008年生まれの最高位はいくらなのかというと、24位のジャクソン・キャントウェル(アメリカ)で、記録は58m33。投擲マニアならご存じだろうが、砲丸投げ金メダリスト,クリスチャン・キャントウェルの御子息であり、15歳ながら2メートル超えの巨躯を誇る金の卵だ。

日本中学記録が幸長慎一(姫路東中3)の持つ51m23であることを考えると、U18カテゴリーの時点で既に海外勢との差が大きいことがよくわかる。

ただし、2023年のリストではキャントウェルの次点が52m39・79位のJaroslav SMĚLÝ(チェコ)であることを考えると、幸長の記録も非常に高い水準であると言える。ちなみに幸長の51m23を2023年の世界リストに当てはめると98位タイ、15歳の記録では4位に相当する。また、この記録がマークされた2012年ではなんと全体8位相当であり、幸長と同じ1997年生まれでは2位相当だった1(※記録を申請しなかったためか、世界陸連には記載がない)

ところで、円盤投げというものは長寿記録が生まれやすいのだろうか。

川崎清貴氏の旧日本記録(60m22,1979年)が陸上最古の日本記録として2017年まで残っていたことが未だ記憶に新しい。また、ユルゲン・シュルトの世界記録(74m08、1986年)は現在もなお最古の記録としてレコードブックに刻まれている。

奇しくも高校における1.5㎏規格実施の最終年度となった2007年(平成19年)に、これまた男子最古の高校記録として残っていた小川智央<奈 良・添 上, 1984>の59m54を更新したのが堤雄司(札幌拓北高3,現ALSOK群馬)だった。23年も更新されずにいた高校記録を一気に2メートルも引き上げたのだから、さすがは堤と言ったところ。

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さて、U18に話を戻そう。堤が高校記録(61m53)を樹立したのは高校三年時の6月。堤は1989年12月生まれであり、樹立当時は17歳ながら同年に18歳を迎えるためU20カテゴリーの記録として集計される。

といってもU20における1.5㎏の記録集計は世界陸連に存在しないため、ここであえてU18カテゴリーの記録として2023年の世界リストと比較してみる。

すると、61m53はリスト7位に相当する一見ハイレベルな記録であるが、前述の通り比較対象は17歳以下の選手、すなわち日本でいう高校二年生以下の下級生であり、この年代がたった一年で記録を大幅に伸ばしてくることを考えると、堤と言えども上には上がいる、といった水準の記録である。

現在は高校一年の選手が(早生まれを除く)U18日本選手権のために1.5㎏を投げるという場合がほとんどであるが、その年代で堤に近い記録を出せる選手であれば、少なくとも同年代やU18カテゴリーでは世界級であると胸を張って言えるのは確かだ。

なお、世界陸上オレゴン銀のマイコラス・アレクナは17歳時に58m45を投げているが、当時競技歴2年程度だったというから驚きだ。

また、U18リストトップは毎年65m前後で推移しているが、U18世界最高はミキタ・ネステレンコ(ウクライナ)の77m50、2位がコナー・ベルの69m67である。他歴代上位を見ても、マシュー・デニーやフェドリック・ダクレス,クラウディオ・ロメロやコンラド・ブコビエスキ(現在は砲丸投げ専門だが)など、近年シニアの舞台で活躍する錚々たる面子が並んでいる。アンダーカテゴリーでの成功は必ずしもシニアでの成功を約束するものではないが、円盤投げにおいてはある程度指標となる部分もある。

世界陸上決勝進出した若手の注目株
  • 匿名2025-08-18

    もう随分前の話になりますが、高校時代、身長の女子に日本人離れした体格の子がいたんですね。身長が175cmはあって、手足がむちゃくちゃ長い人が。いろんな部活が勧誘していて、陸上部でも勧誘したんですが、あっけなくバレー部に取られました。(多分元々バレーしてた)体格だけで判断するのはナンセンスかもですが円盤投やらしてたらすごいことになってたでしょうね…バレーの片手間だったとしても。この出来事で陸上の人材の確保に難があることは嫌と言うほど思い知らされました。

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    • 投人(admin)2025-08-19
      ↳ 匿名 への返信

      陸上界も最近は男子で190㎝以上の人が増えてきたとは思いますけどね。女子はそれほど大型化した感じはなく、女子スポーツにおける高身長=バレーというイメージが根強いと感じさせられます。そういや、高校の時一歳上の女子先輩で175㎝くらいの人がいて、ハードルやってましたね。

      体格が小さいと言われる日本人でも、バレーやバスケの選手はやっぱり大きい人が揃いますよね。「背が高ければこれ」という選択肢が絞られてる時点でこれらのスポーツは有利だなと思います。とはいえ体が大きい人が集まるのは海外も同じなので、体格でアドバンテージが取れるわけでもありません。そう考えると高身長=バスケ・バレーという図式はそろそろ崩れても良いのかなとは思います。他の競技なら背が高いだけでありがたがられますし、下手に背の高さだけで成功体験を得るよりも自分の適性を吟味した上でスポーツを選ぶ人が増えれば日本はもっと強くなるポテンシャルがあるのではないかと。

      村上さんや北口さんは勧誘の大成功例ですね。先生方の慧眼はもちろん、よく陸上を選んでくれたと言いたいです。

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      • 匿名2025-08-22
        ↳ 投人(admin) への返信

        どの競技でも国を代表する選手ともなれば、数多いる選手の上澄みも上澄みです。そのため必然的に身体的特性や技術などその競技に必要なもの全てを兼ね備えた人ばかりになるわけで、そこに身体的にマッチするからという理由だけで入っていくのは早計に過ぎるということですね。

        スポーツをしている人の大半はほんの趣味程度でしょう。だから結局は自分がやってて楽しい競技を選べばいいと思います。しかし、そうはいっても早いうちから1種目に絞ると自分の未知なる適性を潰すことになりかねないので、いろいろやってみてほしいですね。特に投擲競技は技術の転用が比較的容易なので。

        北口さん、村上さんは本当にそのとおりだと思います。よく陸上を選んでくれた!!
        北口さんは水泳でもバドでも実績があり、しかも身長は日本人女子では珍しい179cm。さらにやり投げは水泳やバドと比べると日本人の実績は芳しいとは言えない状況であったのでやり投げ以外の競技に流れてもおかしくはなかったですね。それにもかかわらずこの道を選び、見事に開拓してくれました。
        村上さんは元々剛速球ピッチャーでしたっけ。
        日本では超メジャースポーツである野球の強豪選手であったので、野球の道へ進んでも全く不思議ではなかったですね。こちらもよくやり投げを選んでくれました。

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