投人の観戦記 兵庫リレーカーニバル2023

昨年に続き、地元で行われるグランプリシリーズということで投擲競技を観戦してきました。

今回は実質日本選手権クラスの男子円盤投、フィリピンの20mプッターが出場する男子砲丸投がお目当てでした。

女子種目は同時進行のものがほとんどだったので、残念ながらじっくり見ることは叶いませんでしたが、個人的に面白い発見もありました。

 

中学女子砲丸投

男子円盤投の前に競技開始していました。自分がユニバーに着いた頃には既にベスト8が決まった頃で、実力者の投擲はいくつか見れた、という感じでしょうか。

まぁこの大会に出れる時点で優秀な選手に分類されると思うけどね。

当然ながら回転の選手はおらず、皆グライドで投げていました。技術的な巧拙はともかく、どの子も指導者から教えられたことを忠実にこなしているように感じました。

リバースは難しい技術なのでまずは基本のノンリバースでしっかり突き出す、そのような意識が垣間見えました。

そのためフォームにはあまり個性がなく教科書的に見えましたが、中学段階ならそれで十分なのかなと僕も思いますね。まずはしっかりベースを作って、高校に上がってから自分の投げを追究すればいいのです。

若い子はどうしても結果を急ぎがちですが、体の成長とともに嫌でも記録は伸びます。言い換えれば、若いうちは常にボーナスゲームみたいなものです。基礎なしに家は建ちません。でも若い時は成長(のびしろ)という資材が豊富にあるのですから、基礎を大きく堅固に整えておけば立派な家(=記録・結果)が建つ条件も揃ってくるでしょう。

 

グランプリ女子砲丸投

男子円盤が終わった後、腰を据えて観戦しましたがとにかく台湾選手の気合と迫力が凄かったですね。

丁度僕の前方に座っていた人達がコーチ陣だったようで、選手に何やらアドバイスを送るシーンもありました。

しかし“Chinese Taipei”の名称が“Taiwan”に変わる日は来るんだろうか…。

 

回転は男子の技術という見方を長年持っておりましたが、世界では女子にも回転の潮流が生まれつつあり、昨年の世界陸上オレゴンではチェイス・イーリー(アメリカ)が女子史上初めて回転投法の優勝選手になりました。

 

そしてその潮流はアジアにも。台湾の選手も含め、回転する選手が複数人いて驚きました。自分の知らない間に日本やアジアにこれだけ回転投法が用いられていたとは。

現地で観戦すると、見ることがメインになってしまい技術的なことはほとんど観察できなかったのが残念です。

しかし同じアジアとはいえ異国であれだけの気合と実力発揮する胆力。台湾選手の闘争心は見習いたいものがあります。

 

男子円盤投

堤雄司選手がいまだ第一人者として引っ張っている日本の円盤投ですが、つい先日日本歴代2位となる62m52を叩き出した幸長慎一選手が条件次第でビッグスローを見せてくれるかもと期待していました。

風も時折強い向かい風が吹いたりしていて条件は良かったのかなと思います。SNSで既に知っていましたが、飛川選手が欠場したのは少し残念ですね。

ただ、フィールドのコンディションは観客席と少し違ったのか思ったほど皆伸びなかった印象。

去年のほうが肌寒くて体が硬くなりそうなコンディションでしたが全体的に記録が良かった覚えがあります。

 

日本の円盤皇帝

ただ、やはり堤選手はさすがでしたね。一投目でトップに立ってから一度もその座を譲らずに優勝しました。

湯上剛輝選手も食い下がってくれるかなと思いましたが、一投目以外は精彩を欠いた感じがしますね。しかし近くで見ると凄まじい肉体を持ってるなこの人は。

幸長選手は自己ベストこそ湯上選手を超えましたが、地力ではまだ敵わないのかなと思いました。彼の場合はアベレージが55m以上で安定するようになるともっと一発を狙いやすくなるのかな。

 

去年は一回も見ることはなかったのですが、安藤夢選手が怪我から復帰して50m台に乗せてきたのが個人的には嬉しかったですね。後述する砲丸投の森下大地選手も含め、怪我前よりも一層強くなってほしいと思います。

九州共立大の山下航生選手は相変わらずスロースターターなのか、後半に強いのか5投目にベストを出してきました。以前Twitterで「山下君後半に記録出やすいね」みたいなことを本人に聞いたら「往生際が悪いだけです」って返ってきたのを覚えてます笑

投擲選手としては大事だと思いますけどね、そういう勝負強さは。

 

 

投擲にも愛の声援を

試合だけでなく、観客席も盛り上がってました。主に蓬田和正選手の投擲時に。

僕も懇意にさせていただいている円盤投げおじさん(と中高生の子たち)が、蓬田応援団と言わんばかりにボードを持って音楽をかけ、「ラララララ」とリズムに乗ってタンバリンを鳴らしながら「KA・ZU・MA・SA‼」と叫んでいる姿には度肝を抜かれましたよ。

「あれは俺にはできねえな…」なんて心の中でスン…となってしまった自分は要反省です。人目を気にする必要なんてない、そうだよな、おじさん…。

普段ひっそりと行われる投擲において、この種の声援は物凄く目立っていました。周囲の人の目にどう映ったかはわかりませんが、投擲だって陸上の一つなんですからどれだけ応援しても迷惑もクソもあるかって話ですよね。

試合後おじさんから聞いた話では蓬田選手に地声があまり届いておらず、マイクの音声は聞こえていたのだとか(結構大きな声だったけどな…?)。

 

ちょっと見習わなければならないな、と感じさせられた一幕でした。自分も有志募って日本選手権でやってみようかな…?おじさん絶対に出場してくれよ!

 

 

男子砲丸投

世にも珍しい20mプッターの来日。フィリピンのMORRISON William Edward選手は砲丸王国アメリカからの帰化選手で、自己ベスト20m40を持つ日本勢にとっては格上の選手。

さすがに20mは厳しいとしても、19mは投げてくれるものと思っていました。が、蓋を開けてみると滑ったのか突き出しができなかったのか15mにも届かない投擲。

一投目こそ「Fooo!」といった海外選手特有のファンキーな雄叫びを投擲前にあげていましたが、二投目からはそれもなく、待機中の様子を見てもベンチに座って特に何をするでもなく。

「ベスト8からは漏れへんよな…?」という不安があっさり的中して試合終了。自分の心が汚れているせいか、「もしかしてやる気ないんじゃ…」と思ってしまうような試合内容でした。どこか傷めてたのかな…。

 

明暗分かれた日本勢

一投目、選手たちが中々17mを超えられない状況で森下大地選手(兵庫出身!)が17m73と一つ大きな投げをしたことで試合に緊張感が生まれたように思いました。

台湾の馬選手も刺激を受けたのか17m超え。一投目に17mオーバーしたのは結局この二人だけでした。

昨年覇者の村上輝選手や武田歴次選手,佐藤征平選手ら実力者も調子が上がり切っていないのか今一つキレがない。

そんな中、投擲YouTuberとして一万人以上の登録者を持つ岩佐隆時選手が二投目に17m63、三投目に17m73の大投擲。トップタイの記録をマークしましたが、森下選手のセカンド記録が17m18だったため、同記録ながら岩佐選手がベスト8の最終投擲者に。

砲丸投の同記録というとアテネのネルソンを思い出します。珍しい光景ですが、距離の出ない砲丸投は他種目よりも起こりやすいですね。

 

その後も岩佐選手、森下選手は安定して17m台を記録。優勝争いは二人に絞られていました。

しかし岩佐選手は17m中盤で安定していたのに対し、森下選手は一投目が上手く行き過ぎたのかリズムがつかめなくなっているような様子でした。出だしが良ければ精神的に余裕を持って臨めるが、尻上がりに調子を上げていけるとは限らない。投擲の難しいところです。

森下選手の六投目、17m41のセカンド記録を投げ意地は見せたもののわずかに及ばず。同記録で岩佐選手の優勝が決まりました。

見るからに調子の良さそうな岩佐選手。更なる記録更新、18mスローの期待も高まります。

六投目、砲丸はその日一番の放物線を描いて18mライン上に落下。記録の正式発表前にわく砲丸ピットの選手たち。

出た!18m01!また日本に新たな18mプッターが誕生しました。ピット近くの観客席、隣で見ていた円盤投げおじさんとともに僕も歓声を上げました。記録、内容ともに岩佐選手の完勝といったところですね。

 

敗れはしましたが森下選手も怪我から順調に回復しているようで何より。彼もまた18m台に乗せてきそうな勢いがついてきましたね。

この二人以外の日本勢は少し元気がなかったような気がしますが、まだ4月。日本選手権では18mショットの応酬が見られるといいですね。

 

 

陸上らしい大会

昨年はコロナの関係でまだまだ制限のある中で開催という形でしたが、今年は声出し応援も復活しかなりコロナ前の観戦風景が戻ってきた感じがします。

あちこちで飛ぶコーチの檄やチームの応援を聞くと「そうそう、陸上の大会ってこれよな」なんて懐かしい気持ちにもなりました。

 

昨年に引き続きイチ観客として参加している自分ですが、最適な観戦スタイルは何か、いまだにどの位置から見るのが最も投擲を楽しめるのかわかっていません。陸上の興行的側面やスタジアムの構造など、投擲に目を向けてもらうためのアイデアを常々考えてはいますが中々答えのでない問題であると再認識しました。

良い投擲が出た時は歓声が上がることもあり、少なくとも見ている人がいるんだと実感できたことが今回最大の収穫だったかもしれません。それがたとえ経験者だったとしても、誰も見ないよりはずっとマシですから。

 

リレカは出場経験こそないですが、学生の頃も応援で参加していました。でも当時は観客という意識は全くなく、何となく見ている感じでしたね。円盤投の畑山茂雄さんや砲丸投の豊永陽子先生の投げを見たことは覚えていますが、今になって思うのはもっと真剣に見れば良かったかなということです。

学生だとお金を払って試合を見に行く、という感覚・習慣はあまり馴染みがないかもしれません。しかし、競技者としてだけではなく観客としての目線を持ち、「観る陸上」について一人一人意識を向けていくことが大事だと思いました。


砲丸ピットについて

余談ですが今回男子砲丸投にモリソン選手が出場する兼ね合いで、日本では非常に珍しい20mのラインが引かれていました。ピットのかなり奥に引かれていたので、目測ですがユニバーの砲丸ピット(砂場)は22m50~80くらいしかないと思われます。

ライアン・クルーザーの世界記録が23m37ですから、彼が全力で投げるとタータンもしくは芝生まで飛んでいくわけです。

 

改めてとんでもない化け物だなと。同じ人間とは思えませんね。クルーザーなら軽く投げても21~22m超えてくるんですから。どんな初速・軌道を描くのかいつか肉眼で見てみたいものです。

 

ところで、今回砲丸ピットには15m~20m、大会記録と日本記録の計8本のラインが引かれていました。

正直、多すぎます。15m,16mのラインはいらないでしょう。選手の実力的に16mで満足する人はいないでしょうし、ラインが多いと落ちた場所が何メートル地点なのかすぐわかりません。

砂ピットならなおのことで、時間経過でチョークがかすれて視認性が悪化する一方です。しかも砲丸は一メートル間隔で引くので見にくいったらありゃしない。

「3本目が17mで4本目が…」なんていちいち考えるのストレスでしかないです。テレビならまだ、という感じはしますけども。

ラインは3本ないし多くても4本程度で良いと思うんですけどね。どうしても目印が必要ならライン引かずにコーンだけでいいのでは。

 

 

約20年陸上に関わってきて、未だラインが引かれる法則がわかりません。選手のPBに合わせてるのかと思いきや、明らかに必要のないところに引いていることもしばしば。これは日本に限らずですが。

見る人のことを考えないと、いつまでたっても注目されないのでは。競技運営は選手ファーストであるべきですが、そちらに寄ってるとも考え難いですね…。

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