陸上日本選手権2023 二日目 観戦記

波乱が起きた女子やり投げ

割と上段の観客席で雨に打たれながら競技を観ていました。雨なのに傘しか用意してなかった投人におじさんがカッパを貸してくれたおかげで助走路後ろで観戦できました。ありがとうおじさん!

ピットとは距離があるので選手の顔はよく見えなかったのですが、北口榛花選手(JAL)は体格とフォームですぐにわかりました。「あれ北口さんかな?」と思って練習を見ていましたが、特徴的なやりの引き方を見て確信しました笑

あのクロスに入る時のやりがガクって下がる感じね。他の選手に比べて特にやりを大きく引いてるのがわかります。

しかし一投目に59m92を投げてトップに立つも、今一つピリッとしない感じがあった北口選手。他の選手が記録を伸ばしてくるなかで、意外にも彼女が最も苦戦していたのかもしれません。

断続的に雨が降っていて、時折ほとんど止んだような状態になることもありました。そのような状況下で5投目に斉藤真理菜選手(スズキ)が61m14のビッグスロー。

これはもしかしたらもしかするのでは、と感じさせるほど良い投擲でした。やりを真っすぐ引いて力を一直線に伝えるような投げで、投げた瞬間にこの日一番の投擲だと確信できるほどに素晴らしい投げだったと思います。

6投目になるとまた雨の勢いが増し、再びコンディションが悪化。

先に投げる斉藤選手の6投目はまたしても60mラインを超える投擲。最終投擲者、北口選手のやりは投げた時点で力が逸れたのがわかるような失敗投擲。結局ファウルとなり、斉藤選手が世界陸上オレゴンの銅メダリストを抑え殊勲の優勝を果たしました。

余談ですが選手の顔がよく見えないくらいには離れた位置から見てましたが、いつ見ても北口選手がニコニコしているのだけはよくわかりました。やはりチャーミングな選手ですね。

盛況の男子砲丸投

二日目じゃないしライブ配信で見ていただけですが書かせてください。今回は兵庫リレカで自身初の18m台を記録した岩佐隆時選(Team SSP)と彼に敗れはしたものの怪我からの復調をアピールした森下大地選手(第一学院高教)の争いに注目していました。

若手の有望株アツオビン・ジェイソン選手(福岡大)は調子が芳しくないという情報もあり、18mを超えるのは難しいのではないかと思っていました。

試合が始まると、他の18mプッターが苦戦するなか森下選手がいきなり17m63を投げて好スタート。リレカの時を思わせるような滑り出しで、二投目以降楽な気持ちで競技できたのではないでしょうか。一投目は森下選手がトップを守り、アツオビン選手が17m15で二位につけ、実力者・奥村仁志選手(東京陸協)が17m08で三位。岩佐選手は16m69に留まりました。

試技順は岩佐選手が二番目、森下選手が三番目でしたからこれも大きく影響したような気がします。

そして二投目に展開が大きく動きます。岩佐選手が17m96のセカンドベストを投げて首位に立つと、すかさず森下選手が18m24で反撃。自己ベストまであと5㎝というところまで迫り、怪我からの完全復活を印象付けました。

やはりアツオビン選手の調子が上がってこないようなので、この二人の一騎打ちになりそうな様相を呈していました。

岩佐選手が三投目に18m36の自己ベストを放ち、森下選手を再逆転。森下選手も直後に18m30前後の大投擲を見せましたが惜しくもファウル。彼も自己新が狙えそうな状態にあるのは誰の目にも明らかでした。

しかし、前半に良い記録が集中してしまうとかえってリズムを崩すこともあります。岩佐選手も森下選手もベスト8に入ってからは今一つ伸びを欠いていました。

その二人の間に割って入ったのが現在もなお中学記録を保持する奥村選手。五投目に18m42の自己新をマークし一躍トップに躍り出ました。私は18m50を投げた選手が勝つと見ていましたので、この投擲はかなり優勝に近いのではないかと思いました。

最終投擲の爆発に期待しましたが両者及ばず、奥村選手が見事日本選手権初優勝を成し遂げました。

いやー、国内最高峰の舞台で18m台が三人出たのは非常に喜ばしいですね。昨年に続き二年連続で18mの応酬になったところを見ると、砲丸投も随分層が厚くなったなと感じます。一昔前までは18mといえば日本記録級の選手しか投げられない夢の数字だったのですが、近年では毎年のように超える選手が出てきていますね。

そろそろ18mは日本選手にとっての壁ではなくなってきたのかもしれません。先日樹立された世界記録─ライアン・クルーザーの23m56は、我々からすると雲の上の記録です。ですが少しずつ日本選手も進化しています。まずは19mの壁を破り、アジア、世界へと羽ばたいていってほしいですね。

日本記録保持者(18m85)の中村太地選手は引退してしまいましたが、新たな世代の台頭によりまた記録更新の機運が高まりつつあります。

個人的に森下選手は兵庫出身ということで特に応援していましたし、最近の投げを拝見していて動きが良くなってきているように感じていたので結果に結びついて嬉しい限りです。今回の18m24が本人にとってどういう感触だったかはわかりませんが、私はブロックがカチッとはまって真っすぐ押し出せたら18m50も行けるのではないかと思っていました。

リレカの投げを見る限りではタイミングが合っていなかったように見えたんですよね。

プレッシャーかけるつもりはないですけど、それはまたのお楽しみということにしておきましょうか。

今動画見返したところ、砲丸が結構回転していたのでジャストミートしたわけではなかったのかもしれません。年齢的にもベテランの域に入ってきましたが、投擲選手の旬はむしろこれから。俄然今後が楽しみになってきました。

最後に

今年は最初の競技から見始めたのですが、あの悪天候かつ早い時間にも関わらずU20の男子円盤を見る人がいて安心しました。また、選手の部活仲間が応援している姿が印象的で、ちょっとうらやましくも感じましたね。九州共立大の子たちが「だいじゅんー!」「こうたろー!」と投擲前に叫んでいて「なんかいいなぁ」と投人オジサンは思ったわけです。

もちろん他の大学の子もしっかり応援してましたよ!

途中競技が中断していた時、九州共立大の応援スペースに板山光太朗選手らしき人が引き上げてきていましたが、ジロジロ見るのもただの不審者なんで特に話しかけることもありませんでした。しかし円盤投げおじさん見てると自分も選手達と交流したい、しなければならないと日々強く感じるようになっています。

最近は試合の度におじさんに会うのですが、彼の人脈の広さにビビるよね。トップ選手は大抵知り合いなんじゃないかという。話していて思うのですが、彼の人柄によるものなんだろうなきっと。爪の垢を煎じて飲まなければいけないかもしれない笑

競技を知らない人に魅力を伝える」という企画を最近行っているようだけど、自分も何かできないかな。私としてはまず、競技を知っているはずの選手すら観戦にはあまり来ないという状況を何とかしたい。

ってことで、いつになるかはわからないですけど私が呼びかけたら一緒に競技見てくれますかね?観戦席の一角に陣取って、推しの選手を一生懸命応援するとか。投擲にはもっと盛り上げ役が必要だと思いますし、地味なイメージをなんとか払拭していきたいですね。

P.S. そういや観客席上段は鳥のフンだらけでスッッゲー汚かったぞ…。陸上で普段あそこまで席が埋まることはないとはいえ、カバーかけとくとかくらいはできんかったんか。